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まとめと言う割には時間軸がごちゃごちゃしてしまいましたが、前にイラスト記事で描いたトラ決壊、悟飯決壊の流れをまとめました。あとわかりにくいけど悟天→悟空要素もあります。
粗だらけなのでサラッと読んでくだされば幸いです。なんかもう総受けです。

以下たいへんキャラ崩壊。









未だに見る夢がある。
振り返った微笑。不器用なウィンク。少し首をかしげた、別れの挨拶。
うるさいほどの自分の鼓動と、自らの絶叫で目が覚める。
あのときから、貴方を取り戻すことばかり想ってきたのに。



(AGE 783)

幼なじみを訪ねてみれば、随分と久しぶりな気を感じた。
今日は悟空さんいるんだ。聞くともなしに口に出せば、答える前に、トランクスくんそんな風に呼んでたっけ、と悟天が返して来た。なんだ、なんでそこで不機嫌なんだ。
そこに悟空がいる。それを意識すると、トランクスは思わず気配を伺ってしまう。会った所で、親しく話す話題など、思いつきもしないのに。あんまりにも母親達が、親し気に彼を話すからだろうか。彼に関わる事柄は、いつも温かくて特別なもののように扱われている気がした。
(もしかしたら、向かい合って話したことより、母さんや悟天からの話を聞くことのほうが多いかも)
だからこそ余計に、トランクスにとって悟空は不思議な存在だった。
友達の父親、言葉にしてみればあっけないものだが、実際あまり彼にしっくりくる形容詞ではなく、
父にも母にもそれぞれ別な意味で特別な存在であるのに、自分は顔を会わせても、挨拶以上の言葉もおもいつかないなんて。
そして何故かその事実を、とても歯がゆいものに感じても、いた。
トランクスの問いかけに答えずなんとなくそそくさとした体で自室に向かう悟天を追おうとすると、件の“悟空さん”がひょい、と顔を出した。「あー、トランクスじゃねーか!」満面の笑みで。
「お久しぶりです」
この、人なつこい笑顔を見ると、なんとなく居心地の悪い気持になることに、トランクスは気がついていた。
「そういえばおとうさん、結構ながいことトランクスくん達と会ってないよねー」
背を向けているので、悟天がどんな顔をしているかは、見えない。なんとなく拗ねた言い方。それが何かは解らないが。
「そういえば、そうだなぁ。なんかいきなりでかくなった感じがするぞ」
悟天もトランクスも、成長期の少年だ。もう、青年といってもいい。悟天なんかは、顔だちだけは悟空と瓜二つである。はあ、とはにかんで俯きがちになるトランクスを、悟空は懐かしがるような瞳でみていた。
まあ悟天もいっつのまにかでかくなってるかんなーとかなんとかいいながら、何気ないしぐさでポン、とトランクスの頭に手を置いた。
「あんま子供あつかいしたらトランクスくんも困るよ、おとうさん」「そっか?」
などと親子がやりとりしてるのを聞きつつ、何故か自分の顔に熱があつまってくることに、トランクスは気づいた、といより、気づかれないように必死だった。
「わるかったな」
悟空が手をひく。武道家然とした大きな手だ。さらり、と、トランクスの母譲りの紫糸が、その指に絡み、解けた。
ほんの一瞬、その一瞬が何故か、やたらと艶めいた仕草のように、トランクスは感じてしまった。
ついと頬に触れたゆびさき。
弾かれたように目線を上げると、見つめてくる悟空の黒い目と、ほんの一瞬、交わったのだ。

悟天が、自分をひっぱっていく。そうされなければ、もうそこから逃げ出していたかもしれない。
悲しくも嬉しくもないのに、目の奥がツンと熱くなる。それが何かなど、理解する余裕もなく、ただそれを前にいる悟天に悟られないようにすることばかりが、トランクスの思考を占めた。



めずらしいですね、父さんがここでこんなにゆっくりしているのは、と悟飯が言った。
仕事から帰ってくると、膝に孫を抱えた父親の姿があった。いつもの道着ではなくTシャツとパンツ姿だ。
小脇に抱えていた本を置くと、悟空の膝の上で眠ってしまっている娘をそっと抱えあげた。
遊びつかれたのか。大好きな祖父がいて嬉しかったのだろう。その様子が目に浮かぶようだった。
悟飯がそっと側のソファに娘をおろし、上掛けをかけるのを、悟空は見るともなしに見ていた。
夕食の支度をする音が聞こえてくる。
トランクスが来てますね、と悟飯が言うのに、
「うん。悟天と部屋にいるぞ」
と、床にくつろいだまま悟空は応え息子を見上げる。と、思ったより近くに悟飯の顔があり、一瞬はっと息をのんだ。
「どうしたんです。ぼんやりして」
「そか?そうみえるか」
「ええ」
言葉がとぎれても、己から外れない息子の視線。らしくなく悟空は気が詰まるのを感じた。
なんとなくそれを息子に感じさせてはいけないとも、思った。
「なんかな、久しぶりでよ。いきなり育ってた感じがしてさ。どんどん似てくる…」
な、と、最後のひと文字は。声にならず。
「誰にですか?」
ベジータさんに?ブルマさんに?それとも
悟空は自覚している。わかってる、自分は混同している。あまりにも同じ姿をしているから。
「よせ」
悟飯が唇を寄せてくる。それは顔を庇った悟空の右の掌にあたり、ちゅ、とかすかな音をたてた。
そこに、パンが寝ている。家族の空間でそんなことは、お互い言わずとも匂わすことさえしていなかった。たとえ2人きりでも。
悟飯がその手をとって手首に口づけた。己と同じ凪いだ黒い瞳に、荒々しいものが光るのを悟空はみた。
「とうさん」
なにか念を押すように、幼い子供に言い聞かせるような優しい声色で、悟飯は悟空に語りかけた。




(AGE 775)

ふたたび悟空が地上に戻り、家族も仲間も手放しで喜んだ。
はじめは気後れしていた悟天もすぐに懐き、そのころはまだ悟空の修行にもよくくっついていっていた。
いつだっただろうか、その日チチと悟天はブルマ達のところへ出かけていたが、悟空はいつもの通り修行にいくと言い辞退した。そして皆と一緒に出かけたと思っていた悟飯が家におり、たまにはと同行することになったのだ。
組み手をする。軽い手合わせ。それでも十分に大きな力がぶつかる。
ぶつかっていると解ってしまう。ああ、この人は、もっと高みへといきたがっている。
この平和を甘受するだけではいられないのだと。本人は気づいているのだろうか。
休憩すっか、と地上に降りた父が笑った。悟飯はそれを、眩し気にみている。
たわいない話をした。内容はもう覚えていない。会話がとぎれ、父は草原に仰向けに寝そべったまま目を閉じた。吐息。汗のにおい。父が自分の隣にいる。
…やっと、取り戻せるのだと思った。
「僕は…あの時のことをまだ夢にみますよ」
とうさんを2度、失った日のことを。
つぶやいた息子の声に、悟空は何も言わず、ただそっと瞼を開いた。しばらく草がそよぐ音だけになった。
「...わかってます。自分で自分を責めるなんて、馬鹿なことだと。」
父さんも誰も、そんなこと思ってないってことも。
悟飯は膝を抱えた。その時のことはいつでも鮮明に脳裏に蘇らせることができる。
悲鳴。鼓動。静かな微笑。
困ったように自分を見上げる父親に気づいて、悟飯はうっすらと微笑みかけた。でも、これは後悔でも、自責の念でもないんです。
「ただ、あなたを失う恐怖だけ」
言いながら跳ねた黒髪に絡んでいる草をとってやる。その行為に悟空が気を取られたとき、息子の影は父親におおい被さり、重なって、いた。
「ご…はん…?」
これ以上無いほどの驚きで眼を見開いた悟空が見たのは近過ぎてぼやけた息子の顔。
自嘲する微笑みを浮かべたその顔はひどく悲しくて、2度目の口づけに抵抗する気力を悟空から奪うのすらたやすかった。大きな違和感を抱えながらも、震える唇が、悟空にはいっそう愛しく、ただ、息子の好きなようにさせた。逃げないんですか、調子にのりますよ、とその言葉で自分にブレーキをかけようとする悟飯は、それでも悟空が受け入れたことでひどく安堵しているのがわかった。
包み込むようにおおい被さる身体は男だった。しかし自分が抱いているのは昔のままの小さい悟飯だ。
そう思った矢先に鋭い言葉が悟空の耳朶を震わせた。

「あの人の時もこうやって受け入れたんですか。」

「え?」
問いかけの中身を悟空が理解する間に悟飯はその背中をかき抱いた。先ほどとは比べ物にならない深い、深い口づけ。滑(ぬめ)る舌が必死に悟空の口内を蹂躙した。快感が、意思を無視して引きずり出されて行くのを感じて悟空は慌て身をよじった。どうしても漏れてしまう声に反応するような興奮した息子の熱を腰に感じ、悟空は怖じ気づいていた。
僕は知っているんです。あの、修行の合間のわずかな空白の日。病で失いかけた父さんの、側にいていたいという思いか、あるいはなにか予感があったのかもしれない。貴方がふいに気配を消したから、僕は何も考えずにただその姿を探しあてた。
父さん父さんとうさん、僕がずっと貴方にこうしたかったことを、貴方は知らないですよね気づくはずもないですよね。知っていた、あの人が、父さんを見る目。焦がれていた。悲しみさえ滲ませて。それをあなたは受け入れた。あの人が父さんに縋った。父さんはあの人に許した。別れの前に、睦み合ったふたりだけの秘密。本当はそこにいるのは僕であるべきだったのに!
「駄目だ」
悟飯。
悟空の口調は毅然としている「あれはそういうんじゃねえんだ。お前は−」
「哀れみだったのか同情だったのか、僕はしりませんしもうどうでもいいんです」
もうあの人はいないのですから。この次元に存在すらしないのだから。
ただ、とうさん。
僕はもう、貴方を失いたくはない。何者からも奪われたくない。
「僕から逃げることは、許さない」
息子の顔をした男は悟空の戸惑いすら嬉しそうにねじ伏せた。
晴れ渡った空と父のひきつった悲鳴が、あの悪夢を塗り替えてくれるはずだ。




(再びAGE 783)

トランクスくんって、お父さんのこと苦手だよね。
居間で悟空と会ったあと、何気ない感じで悟天が言った。
「えっ、なんで」
「あれ、違った?」
当たり前のように小首をかしげて言うものだから、そんなに露骨にそう見えるのか、とトランクスはあせった。問うと、いや、なんとなくだけど、とまたなんでもない風に悟天が言う。どっちなんだ。
苦手…そう思ったことはない。が、自分の悟空に対してのそれは、言葉にするとそんなものなのか。
どう接していいのかわからない、というと、それは苦手ということで合っているのかもしれない。そうなのかな、とつぶやくと、そうなんじゃない、と悟天が言った。
「なんか、悟空さんって、よめなくないか?」悟天は親子だから、違うかもしれないけど。
逆にどうして他の誰もがすぐに打ち解けてしまうのかが解らない。
いつも人好きのする笑顔で、だれにでも同じように明るく接する。
そのくせ、みんなが集まっている時には、意外と、話の外でそれを眺めているだけの時が多いのだ。
そういうとき、悟空はなんだかあまり人に興味がないようにも見えた。
まあそうかもね。と悟天はうなずいた。
(それに、そのことに気づくと、何故かすごく不安な気持になる)それは、言わずに心の中でだけ思った。
「ていうかなんか...よく見てるねぇ」
お父さんのこと。ちょっとびっくりしたように親友が言う。
「え?あー…なんとなく思っただけだけどさ」言って、なんだか取り繕うような言い方だったと自分で気づいた。
しかし悟天は、「いや、ま、わかるよ」
それ。と、どことなくおもしろくなさそうにこぼす。
「それで割と、トランクスくんにはかまってくるしね」
言われてトランクスはきょとん、とする。
「そんなことないだろ」
「そうかな」
「そうさ」
だって自分が悟空のことをあまり知らないのと同じように、悟空はあまり自分のことをよく知らない。と、思う。
母親と仲がいいから、息子にも親しみを持つとか、たぶんそういうの。
「トランクスくん、あの話覚えてる」
どの話のことを言ってるのか、トランクスにはわかった。いま、それを思い出しそうになって、やめたからだ。
悟空がどうして死んだのか。悟天はちいさいころ、しきりに兄に父親の話を聞きたがったし、悟飯じゃなくても誰もが喜んで、悟空の話を聞かせてくれた。
トランクスも、興味があった。なにかそういう物語のように、その戦いの話を聴いた。もう1人の自分。悟空の命を、みんなを、未来を助けに来た。
「トランクスくんがいなかったら自分が生まれてなかったと思うと、なんか変な感じだよねー」
トランクスくんとその人は別人だけどさ、と、悟天はわらった。
そうだ、別人だ。
悟空は、自分を見て、その自分の知らない人間を、思い描いているのだろうか。
悟天も、悟空がそう感じていると、思っているのか。


「夕飯食べてかないの」
悟飯さんたちによろしく、といって、トランクスは悟天の部屋の窓から飛び立った。
いましがたまで感じていた悟空と、そして悟飯の気が消えていることが、妙に気になった。
なんとなく顔を会わせる気になれなくて、そのまま帰ったのに。その気が感じられないことに、トランクスはまた自分でも得体の知れない不安をちくりと感じた。
もう暗くなった空のなかを、トランクスは行く。
「苦手...なのかな」
つぶやいた。でも不思議といまこの時は、そうだとは思えなかった。
横から吹き付ける風に、トランクスは前髪かきあげた。そうしてあのゆびさきを、思い出している。
無性にもう一度、触れてみて欲しいとおもった。そうしたら自分は何を想うのか。
ふりきるように、風を切った。あと1年で、自分は「未来のトランクス」と同じ年齢(とし)になる。














悟空さん
おずおずと呼ばれるその声にまじったどうしようもない感情をただ、悟空は肯定してやりたいと思ったのだ。
そっと背に手をまわしただけで、両親の面影を写した端正な顔は動揺を滲ませた。泣きそうに睫毛が震えた。必死に自分を呼ぶ声を、熱い身体を受け入れるために悟空は力を抜いた。
彼の孤独を癒そうなんて思いあがってはいなかった。ただ望むままに抱きしめてやりたいとその時思っただけだ。
そう、そこは、孤独だろう。
敵は強い。うまくいっても、やがているべき場所にもどればまた1人で戦わなくてはいけない。あるいは、この地で散るか。
青年の過去にも行く手にも真っ暗な闇がどこまでも続いている。光は今、彼の立つそのただ一点だけに収束していた。

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memo

10.06.20

久しぶりすぎで恐縮ですがトラ空を1本。
あいかわらず俺得です。
トラ空…増えないかなぁ…

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